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今日はヒトデ祭りだぞ!

主に勢いに任せた雑記

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オタク大学生ファッション奮闘記 その3 ゾーンプレス

趣味-ファッション 趣味

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www.hitode-festival.com


 戦況は熾烈を極めた。
 追い詰められている? この僕が……? ヴァイスシュヴァルツ地区決勝名古屋大会、シュヴァルツサイド限定構築ベスト4の実績を持つこの僕が……?
 そんな事があってたまるか。
 
 深呼吸をして、ヘタった足に喝を入れる。僕は勝つ。勝つんだ。
 機を伺う。警戒されていては駄目だ。あらゆる面で、僕は彼等に劣る。そんな僕が奴らに立ち向かう方法はだた1つ。不意を突くこと。そのためには忍耐だ。忍耐力なら、僕は奴らに勝つ。

 どれだけの時が経っただろう。あまりにも唐突に、時は来た。「敵」が背を向けたのだ。隅で様子を伺っていた僕に機が訪れた。風は吹いた。チャンスは今しかない。……にも関わらず、足は動かない。クソ、ビビっちまってる。動け、動けよ! 頼む、動いてくれ……!


 ……駄目だ。動かない。もう、本当に、駄目だ。目の前をするりと「チャンス」が通り過ぎていく。今を逃したら、次はいつになるだろう。それがわかっているのに、動けない。何て駄目な奴なんだ、僕は。
 ……撤退しよう。

 踵を返そうと振り返ると、ポケットから、何かが落ちた。
 それは、布製の筆箱だった。

「……smart」

 思わず呟いた。あの時の、雑誌の付録の筆箱。
 smartよ。お前は俺に、行けというのか。あまりにも勝ち目の薄い俺に、行けというのか。
 あの日の事が思いだされる。そうだなsmart。ここで逃げ出したら自転車を漕いだ1時間が、無駄になっちまう。
 俺、行くよ。

伝家の宝刀


 弱った心に、逃げ出そうとした足に再度喝を入れ、僕は一歩を踏み出した。目標との距離を一気に詰める。まだ目標は僕に気付かない。やれるはずだ。自分を信じろ。自らを奮い立たせ、僕はさらに強く1歩を踏み込んだ。後少し。もう一歩。あと一歩。
 

「いらっしゃいませー」

 店員の声がする。気付かれた。入店したのだから当然だ。敵のチェックは素早い。即座にこちらに歩み寄ってくる。
 だが、させねーよ……!
 丁度棚を挟んで店員との位置を対称になるように、さり気なく距離をあけていく。願わくば、この行動で察してくれ。俺は見に来ただけなんだ。お前と会話をする気はない。
 半周程棚を回ったところで、店員は動きを止めた。
 勝った! この店員さえ降り切れば最早勝利は目前だ。あとは適当に物色をするだけ。今日はそこまでで良い。これだけでも、俺は大きく成長出来る。「栄光」は、「俺」にある……!


 勝利を確信すると、ふと視線を感じた。頬を冷たい汗が伝う。顔をそちらに向けて、僕は自らの楽観的思考を呪った。何と言う事だ。進行方向に、別の店員が待ち構えていたのだ。
 ダブルチーム!?
 しまった!
 まずい。対処を……。
 しかし逆サイドには既に先程の店員。逃げ場は……ない。これが大須商店街、伝家の宝刀ゾーンプレス。店員A(沢北)と店員B(深津)のプレッシャーを前に、ど素人の僕は成す術が無かった……。



店員「何か、お探しですかぁ?」

僕「あっ、あっ、あっ」

店員「(僕の正面のコートを見て)アウターとかをお探しですかね? でしたらこちらのPコート何か如何ですか? 新作なんですよー」

僕「あっ、あっ、あっ」

店員「裁断がすごいしっかりしてて、シルエットが奇麗なんですよねぇ。もしよかったら着てみます?」

僕「あっ、水見式という方法が あっ最も簡単で あっあっ 一般的な あっあっ」

店員「わー、すごいお似合いですねぇ! それ全部出ちゃってて、Mサイズはラスト1着なんですよ~!」

僕「あっあっあっ」

店員「お買い上げ、ありがとうございましたー」

僕「あっ」

 

 ーー負けた。


 負けたんだ……。
 僕は泣いた。
 なんだよこのコート。肩の辺ガンダムみてーでだせーよ。いらねーよ。7800円、返してくれよ。畜生……。
 大須商店街で、自らのあまりの無力さに打ちひしがれた。もう、駄目だ……。
 こんなところ、二度と来るものか……。

「あれ? お前ヒトデ?」

 そんな絶望の中、声が聞こえた。

 顔を上げると、中学時代の旧友だった。そして、お洒落だった


「へー、この辺で服とか買うんだ」

「意外と良い店あるよなここ。一本入ると古着屋あるの知ってる?」

「今日何買ったの?」


 救世主だ……。
 僕は、元々仲の良かった事もあり、彼に全てを話した。包み隠さず、ファッション誌を買うための奮闘、モテたいという葛藤、そしてついさっきガンダムコートを買ってしまった事も。
 友人は腹を抱えてひとしきり笑った後、言った。

「そんじゃ、今度一緒に買い物行くか」

 闇の中に、光が刺した瞬間だった。

 一度は打ち抜けされたが、僕はもう、一人ではない。僕は再度、立ち向かう事を、リベンジする事を誓った。
 つづくっ。

理系大学生ファッション奮闘記 その4 TAKEO KIKUCHI - 今日はヒトデ祭りだぞ!