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今日はヒトデ祭りだぞ!

主に勢いに任せた雑記

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小説書いたんで読んでください。1「最高の楽器」

趣味-小説


というわけで昔のパソコンからデータを発見したんでリライトして投下します。ブログでも読めるように掌編小説(2000~4000文字くらい)になります。たぶん5分くらいで読めると思います。

本当は文字が詰まってますが、流石に見にくいので行間空けました

本作はプロットとかテーマとか特に無く、書きたいように書いていたら最後まで書き切れた稀有な作品です。なお大抵は破綻します
常に意識している点は「ラノベらしさ」を忘れない事

普段から小説を書く人のように良い文章ではありませんが、良かったら読んでください。その2は、まあ、何かしら反応があれば;; でも恥ずかしいから拡散とかは良いです;; 

ぶっちゃけ自分の作品見せるのってもう全裸を見せてると言っても過言では無いんで、(あーあ)ってなったら無理してコメントとか残さなくて良いんでそっとしといてください!

 


(こんだけ予防線張れば十分だろ)

 

ではどうぞ
 

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最高の楽器

 

 バンドの中で最低の楽器はドラムだと思っている。 

 そりゃ演奏している時は楽しいが、そんなの他の楽器だって同じだ。やたらに疲れる割に、対して注目はされないし、失敗すると目立つ割に完璧にこなしても歓声は飛んでこない。そんな不満を誰かにぶつけるでもなく、俺はドラムセットの前に座っていた。
 ハイハットのザラついた金属音とスネアドラムの乾いた音、それにバスドラムの腹の奥底まで届く重たい音を加えた三種の部位で奏でる16ビート。
 そして、それに合わせて響く重低音。先輩のベースだ。小動物のように小柄な先輩に大きなベースのアンバランスさが可愛らしい。下を向いて瞳に影を落としながら、大人しくリズムを刻んでいる。テンポを指定したわけではないが、お互いまったく同じテンポで演奏を続けている。
 夕焼けの空き教室。もとい軽音楽部の部室である。壁につけるタイプの防音材がついていたりするが、元はただの教室。スタジオのように完璧ではない。
 窓からの夕日がドラムセットに反射して眩しい。
 先輩に目配せすると目があった。実年齢よりも5歳くらい年下に間違われてもおかしくない容姿の先輩だが、この時ばかりはしっかりと年上の顔をしている。そして小さな口の端を吊り上げた。それが、合図。
 リズムはそのままで4つある太鼓を全て2回ずつ叩いてから、スティックを思いっきり振り上げる。そして、クラッシュシンバルに向けて力の限り振り抜いた。その名に恥じない音が弾ける。
 それと同時に、先輩の体が揺れた。
 先ほどまでとは打って変わって激しい動き。親指で弦を叩くようにはじく動作と、人差し指や中指で弦を引っ張って指板に打ちつける動作の2つで成り立つ奏法。スラップだ。
 今までとは対照的な アタックの効いたサウンド。
 先輩は演奏をする前に言った。
「ベースだって、ドラムに負けないくらいの打楽器だよ」
 と。
 いや、それはおかしい。と食って掛かったが、今ならあながち馬鹿にすることもできない。その弦楽器から奏でられるパーカッシブな音は、俺の胸をこんなにも震わせ、熱くしている。
 たっぷりそれを漫喫した俺は、そろそろセッションを終わりに向かわせようとする。しかし先輩はそれを察知すると、汗塗れにも関わらず光悦した表情を向けて無言で訴えるのだ。「続けろ」と。


 言うまでもなくドラムの演奏は疲れる。かれこれ30分ノンストップで叩き続けているが、ただの教室にエアコン何て便利な物はないし、防音の関係上部屋は閉め切らないといけない。完全に汗だくで、いい加減リズムにもブレが生じ始める。そのたびに先輩は「もっと」という顔で、物足りないとでも言うようにこっちを見つめるのだ。そんな顔を見せられては、男として奮起しないわけにはいかない。
 だが、それでも、正直きつい。さすがにもうきつい。目元に落ちてくる汗を頭を振って誤魔化し、いい加減終わらないだろうかと顔を上げる。
 目を瞑って、小さな体を揺らす先輩が視界に入った。口元は笑み。楽しそうに、本当に楽しそうにベースで遊んでいる。そして先輩はただ揺れているんじゃない。この揺れは、俺のドラムから発せられたリズムによって生まれている。俺に、リズムを委ねているんだ。
 こんなにうれしいことがあるだろうか。
 こんなに燃えることろがあるだろうか。
 こうなったら、とことん付き合ってやる。
 気合を入れなおし、言う事を聞かなくなってきた右手に喝を入れ、今までのリズムを刻み続ける。そう、先輩に楽しんでもらうために。そのためなら、いつまでだって。
 

「っはぁ……! はぁ、はぁ……」
 ドラムの椅子に座ったまますぐ後ろの壁に背をつけ、そのままずるずると床へ座り込む。死ぬかと思った。
 ようやく解放されたのは、時計の針が一周した後だった。何度も何度ももう止めようかなと思ったが、そのたびに気合で持ちこたえた。正真正銘の限界だ。心臓の音が聞こえる。両腕がバカみたいにダルい。
 溢れ出る汗もそのままにバスドラム越しに先輩を見る。
 ペタンと床に座り込んで、下を向いたまま荒い呼吸を整えている。よく見ると右手の指には血がにじんでいるように見えた。とんだベース馬鹿だ。
「っはぁ……。せ、先輩……」
「なぁに……?」
「その……、こんだけ盛り上がっておいて言いにくいんですけど……」
「……んー?」
 そう、なし崩しに始まったセッションだが初めからずっと思っていた事がある。
「何で……二人だけなんですか……?」
 そう、部室には僕達二人だけ。ドラムとベースだけでは、バンド演奏とは言えないだろう。
「二人じゃ、ダメなの?」
 汗を拭いながら先輩が顔を上げる。その姿は夕日に非常に映えていた。でも、言っていることはおかしい。ダメだろ。常識で考えたら。
「バンドってのは、最低でもあとギターとボーカルがいるでしょう」
「何で?」
「何でって……」
 ……何でだろう。
「私は、楽しかったな。今までみたいに1人じゃなくて、リズムを支えてくれる音が他にあって、思いっきり演奏するの」
「そりゃ俺だって楽しかったですけど……」
 呟くように言う俺を見て、先輩が立ち上がろうとグッと力を入れるが、すぐに脱力してしまう。立ち上がることを諦め、ベースをスタンドに立て掛けるとこちらにずるずると這いよってきた。
「うわ、なんですか」
 汗で制服が張り付いて、色々と扇情的な見た目になってしまっている。距離をとろうにもすっかり腰が抜けてしまっていて、情けないことに体をずらすことすらできなかった。
「ねえ」
 先輩が顔を上げる。 僅かに汗ばんだ額に絹糸のような髪が数本だけ貼り付いている。そんなことがわかってしまうくらいに近い。距離が近い。動揺を隠しきれない。さっきとは違う意味で心臓がやかましい。
「私、ドラムできる人が入ってきてくれて、すごい嬉しい。他のどのパートよりも、ドラムの人に入ってきて欲しかったの。一緒にリズムを刻めるような人が、欲しかったの」
「は、はぁ」
「これからも、よろしくねっ」
 満面の笑み。
 無邪気なそれに、完璧に射抜かれてしまった。なんだそれ。正直、反則だと思う。顔が熱い。心臓の動悸が収まらない。それでもなんとか平静を装い、声をひっくり返すことなく返答をした。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
 仮入部最終日、初めてこの軽音楽部を訪れてから五日目の出来事だった。
 夕暮れの教室で、自分の意志に間違いはないかと確認する。うん、やはり、間違いない。

 バンドの中で最高の楽器はドラムだと思っている。