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今日はヒトデ祭りだぞ!

主に勢いに任せた雑記

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小説書いたので読んでください3 「クロス・フォン・ジークフリード」

趣味-小説

 

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意識した点

  • 今まで一人称しか書いたことなかったので、三人称を書いてみたかった
  • 初めの2行だけ、ふっと湧いてきたので残りを勢いで書いた 
  • 三人称でかつ読みやすい文章となると難しい。全体的にぎこちないけどご愛嬌
  • 厨二
  • つまり勢いだ!

クロス・フォン・ジークフリード


 何故現代の日本では魔法が存在しないのか。
 否、存在しないのではない。認識がされないのだ。
 魔術協会は「魔法」は現代の人間にはあまりにも荷が重すぎると判断し、その魔法によって「魔法というのは所詮作り話だ」と思い込む魔法を地球全体にかけた。
 それはもう大規模な作戦でかなりの時間と手間を用したが、その甲斐あってか現代社会から魔法は作り話だという認識がばっちり根付いている。

 しかしいかにこの魔法が優れているとはいえ、1つだけ欠点があった。思春期になるにつれて、具体的に言うと14歳をピークにこの魔法が弱まってしまうのである。しかしその時期さえ過ぎ去ればまたその魔法は力を発揮する。
 経験したことはないだろうか。自分が、あるいは同級生が14歳前後の時期に魔法を思わすような発言や行動をしていたことを。
 そして今現在、教室で1人熱弁を振るうこの少年もその一人だった。

「俺の真の名はクロス・フォン・ジークフリード。傭兵だ。得意な魔法は……おっと、これはやめておこう」

 周りのクラスメート達は引いてしまっているが、むしろおかしいのは彼らの方だ。なんせ彼、笹原健太君の真の名は確かにクロス・フォン・ジークフリードだし、職業も傭兵である。そして傭兵が自ら自分の得意技をばらすなど命取りもいいとこだ。隠すのは当然と言える。
 最も力を取り戻す時期とはいえ、魔法を消す魔法が浸透したこの世界で、こうまでもはっきりと自分を認識できる彼はかなり優秀な魔術師だと言えた。
 彼は傭兵と言ったが、何を相手に戦っているのか。それは「妖魔」である。こいつは人間の精神を襲う大変恐ろしい化け物だ。
 しかし「魔法」という概念が消えた社会では、彼らもまた認識されず、結果的に力を失っていた。精々日常生活に紛れてリモコンを隠してみたり、鞄の中のイヤホンを絡ませる程度の事しかできていない。
 とはいえ「上位種」ともなれば話は別だ。奴らはあらゆる手段を使って人間の精神を消耗させる。外出先のトイレの紙を切らしておいたり、夏に自転車を漕いでいる人間にカナブンをぶつけたりするのだ。
 その数々の非情な「攻撃」のせいで、今まで人間達が受けてきたダメージは測り知れない。

 そんな妖魔からの攻撃に対抗すべく、「機関」の送り込んだ傭兵の一人が彼、クロス・フォン・ジークフリードなのである。

 
 退屈な歴史の授業中、頬杖を突きながら空を眺めるクロス・フォン・ジークフリード、もとい笹原健太君はため息をついた。
 この世界は、どうしてこんなにも醜いのか。人間は、何故争いを止めることができないのか。
 自分の思考に対してやれやれと言った風に笑うと小さな声で呟いた。
「フッ……。真に汚れてしまったのは、俺の方なのかも知れないな……」
 高尚な彼の悩みは「目覚めていないもの」には決して理解されない。そしてその事は彼が一番知っていた。隣の席の美加ちゃんが嫌そうな顔でこちらを見ていても。
「いや、なんでもないんだ。なんでも……」
 と窓の外を眺めながら孤独に呟くのだった。
 嗚呼、孤高の傭兵よ。君の苦しみを理解できる人物などいないのかもしれない。馬鹿にされ、おかしなやつだと罵られようとも、彼らを守るために君は戦い続けるのだろう。
 と、ここで彼は1つの違和感に気付いた。
(時空が……歪んでいる……。『上位種』かッ!)
 ガタンと音を立てて立ち上がる。周りの視線が集まるが彼はまるで意に介していない。そう、彼が感じた違和感。時間の経過が遅すぎる。間違いなく、『退屈な授業の時に時計の動きを遅くする』妖魔の仕業だった。
 時計を≪第三の真実の瞳≫で睨み上げる。
 緻密な隠蔽を施されているが、彼の≪第三の真実の瞳≫の前では無力だった。大きさはおよそ2m。何から何まで真っ黒で、翼と尻尾と角の生えた恐ろしい悪魔が人差し指を使って時計の動きを止めていた。まだ向こうは姿を隠しているつもりでこちらに気付いていない。先手を打てる。
 と考えた彼だったが状況を認識し、舌打ちをした。
 ここで戦っては、皆を巻き込んでしまう。それだけはいけない。彼の役目はまさにこの学校の人物全ての警護なのだ。
「チッ……。仕方ねぇ。……閃光鎚!」
 彼の手元から投擲された光の矢が時計の真横の壁にぶつかって音を立てる。周りの人間にはカラーペンを投げたようにしか見えないが、彼の魔力が籠ったそれは妖魔に十分なダメージを与えるだけの威力を持っている。
 しかし一撃で倒せる保証はない。激昂した悪魔がこちらに襲い掛かっては守るべきもの達に被害が出ると考え、あえて外したのだ。
 余談だが「槌」は矢でなくハンマーを意味する言葉だと知るのは彼が高校生になってからの話になる。
 妖魔がギョッとした様子でこちらを見た。そしてこちらの手元の二撃目の脅威に気が付くと即座に教室から飛び出した。
「逃がさん! 閃光鎚・双牙!」
 二発の矢を穿つと共に教室から跳ねるように飛び出る。後ろで生徒のざわめきと教師の静止の声が聞こえたが構っていられない。ジッとしていれば、また俺が守ってやる。と笹原健太、いや、クロス・フォン・ジークフリードの瞳が言っていた。

 妖魔がどこかの教室に逃げ込まないように≪第三の真実の瞳≫と≪閃光鎚≫を使いながら追い込んでいく。そして妖魔が最後に逃げ込んだ扉の先は屋上。
 強い風が彼の制服(最も4重もの≪対魔障壁≫によりコーティングされているが)を靡かせた。
 そして狭い室内から解放され、翼を広げてこちらを見下ろす妖魔。動きの自由を手にし、地の利は自分にあると自信満々の様子だ。しかし彼はその妖魔の視線をまっすぐ受け止めながら、
「ここなら、力をセーブする必要はないな」
 と笑った。
 その言葉を理解したのか、妖魔が漆黒の翼を大きく広げ、この世のものとは思えない奇声で屋上の空を震わせた。一度大きく高度を取ったかと思うと、ほとんど垂直に落ちてくる。
「……来いよ、化け物」
 クロス・フォン・ジークフリードは襲い掛かる凶器の爪と牙を、≪BBB(ブラック・ブラッド・ブレイド)≫で迎え撃つのだった。


 死闘を制した彼を待っていたのは教師の怒りの言葉とクラスメイトの冷ややかな反応。席の美加ちゃんとの机の距離は1mを超えていた。
 だが、それでも彼は戦うのだ。どれだけ馬鹿にされ、中傷されたとしても、ただ皆を守るためだけに。
 数年後にはかつて自分が誇り高き戦士であったことも「何か恥ずかしいことをしていた」という曖昧な記憶として補完される。それを彼は知っていた。しかし、それでも彼「クロス・フォン・ジークフリード」は、皆を守り続けるのだ。
 そしてこれは何も、彼に限った話ではない。
 もしもあなたが14歳前後の少年たちに同じような症状を見たとしても、決して馬鹿にしないでほしい。彼らは真剣に戦っている。フィルターのかかった私たちの目からでは痛々しく、異常な光景に映ってしまうが、むしろ異常なのは私たちの方なのだ。
 何も全面的に支持をしてやる事はない。ただ後ろに回ってそっと肩に手を置き。「私は知っているよ。いつもお疲れ様」と労りの言葉をかけてあげてくれ。
 それだけでも彼らは自分が認められ、誇り高い行動をとっていると自信を持つ事が出来るのだ。
 勇気ある彼等に、称賛を。